私は精神科病院で勤務していた頃、警察や救急等を介して緊急で入院される方を数多くみてきました。ほとんどの方が治療を全く受けていないため例外なく病気の症状は進行してしまっており、また生活の環境は整っておらず、支援の手はほとんど入っていない、という状況になっていました。私はなぜこんなになるまで何の支援も受けずにいたのか、何の支援も入れないのか疑問に思っていました。そこで私のこれまでの経験とそこで築く事ができた医療機関や福祉関係者等との人脈を活かして、地域にお住まいの方々で支援が必要と思われる方々に、当事務所として何かできる事がないか考えるようになりました。

 そこで地域にお住まいの方の事は公民館、特に自治会長さんが一番把握していらっしゃるだろうと考え、お話を伺いました。その結果、どの地域の自治会長さんも共通して仰られていたのは、支援が必要ではあるが支援がなかなか入れない方についての対応は難しく、民生委員さんの声掛けや、地域の交流サロン、催し物を通じての関わりを試みても、対象の本人や家族が応じて活動などに参加する事がほとんどない、といった現状との事でした。加えて個人情報保護の観点から、ご本人・ご家族の同意を得ずに様々な支援機関と情報を共有して支援に入る、という事はできない現状があり、難しい活動である、とのご意見をいただきました。しかし同時に、地域を良くしていくのに必要な活動なのは間違いないとのご意見もいただきました。

 そこで当事務所としては無料の相談会や公民館等でのセミナー活動などを通じて、これまでの相談支援経験を踏まえ、医療や福祉関係者とは異なった視点から支援が必要な本人・家族と直接関わりを持つ事から始めていく事としました。

 以上の通り、お話を伺った結果、支援が必要な方への活動はこれまで行政をはじめ自治会、医療・福祉関係者など様々な方々が行ってきた活動ではあるものの、支援が必要な方の病状や生活環境が悪化してしまう前の早い段階で適切な社会資源の提供をする、というのは大変難しい事が分かりました。しかし、これまでの経験や人脈、士業としての知識や経験を活かして何かしら支援できる事が必ずあると思っています。当事務所では、まず今できる活動から行っていきたいと考えておりますので、今後の活動に進展がございましたらこちらでご報告していきたいと思います。